研究室紹介
研究分野:音響情報処理研究
 1. 音響物理
 2. 音響工学
 3. 信号処理
 4. 建築音響
 5. 音場制御
 6. 騒音制御
 7. 波動コミュニケーション

研究室概要
音は人にとって重要な情報伝達手段である。 人は耳と脳を用いて空気の気圧変動である音を捉えている。 そのセンサと処理能力は驚異的なものである。 現在研究室では大学院国際情報通信研究科を中心に理工学部電気電子情報工学 科、情報 科、建築学科など の卒業研究生、修士課程、博士課程の学生が助手、嘱託、研究員と共に、ユネ スコをはじめ内外の大学や研究機関とも協力して快適な音環境の実現を目指し て研究を続けている。
具体的には騒音の制御,評価のあり方,明瞭に聞き取ることのできる教室など の音場設計,超伝導やレーザを応用した電気音響変換器,広く使われているマ ルチビットではない高速標本化1bit信号処理,視覚・聴覚が退化してしまっ た文明国の人々の目や耳でなく人間が本来持っていた視覚・聴覚に基づく符号 化やVR構築,一般化調和解析など原点に立ち返った信号処理,文化遺産から の非接触・非破壊音情報読み取り,言語獲得に関する研究等を進めている。
また21世紀COEプログラムProductive ICT Academia Programにおいて、 波動コミュニケーション学の研究を進めており、 理工総研においては小林哲則先生、情報学科の白井克彦先生方とプロジェクト 研究「音空間研究」も進めている。

研究テーマ
1. 電気音響変換器
  マイクロホンやスピーカを設置される室内を含めた音響設計,具体的には 平面スピーカや室形の工夫による公平なヒアリング試験のできる均一で明瞭な 拡声,快適な遠隔授業,会議システムの確立などを目指している。 また,レーザを用いた大平面マイクロホンを用いた騒音のリモーツセンシングや 超伝導を用いたスピーカと1bit処理を用いた省エ ネルギーシステムの提案も行っている。

2. 通常のマルチビットではない高速標本化1bit信号処理
  標本化周波数が帯域を,量子化ビット数がダイナミックレンジを決定する と思われがちであるが,シャノンの情報理論に基づけば重要なのはそれらの積 つまり伝送容量である。 量子化器を帰還ループに入れるなどして量子化雑音を可聴帯域外に追いやるこ とにより,数100k〜数MHzの標本化周波数1ビット量子化で100kHzに及ぶ広 帯域音響信号を扱うことができる高速1bit符号化方式を提案し,録音,音響 測定にも用いている。 高速1bit符号化回路の設計,量子化雑音の制御,DSPを用いた符号化方式 などの検討を行っている。

3. キルヒホフの積分公式に基づく音場制御
  キルヒホフの積分公式によると制御空間を囲む境界面の音圧と法線方向の 空気の粒子速度を所望の音場のそれらと等しくなるように制御することにより, 境界面の内側に任意の音場を生成することが可能である。 室形の決定と同時に,キルヒホフ積分公式に基づく音場制御理論を導入した電 機音響設計を行い,音響VR(Virtual Reality)システムの構築,三次元音 空間の伝送等の研究を行っている。

4. オーディトリシーンアナリシスと人間のすぐれた聴覚機構に学んだ処理
  人間の優れた聴覚に着目して一般化調和解析などを用いた高能率符号化を検討している。
一般化調和解析はウィナーが提案した残差が最小になるような周波数成文を逐 次見つけ出し抽出していくという人間の聴覚機構にも似た単純明快な周波数解 析手法である。 また,帯域別の包絡線情報に着目した話者,音源識別方法を検討している。 さらに,人間の耳で聴き分けられる音の違いは時間や手間をかければ機械でも聴き分けら れるはずだと言う考え方に基づいて音源の分離,識別などの処理を人間の聴覚 機構に基づき行っている。

5. 近接4点法による三次元音場計測
  近接4点法とは当研究室で20数年前に開発した測定方法で同一平面上にな い近接した4点で収録した音響信号を用いて音源の位置や大きさを求める手法 である。 最近は移動音源を含む音源の実時間推定および三次元音場の空間情報伝送への 応用を検討している。

6. 文化遺産からの非接触・非破壊音情報読み取り
 レコードや蝋管などの貴重な文化遺産から非接触,非破壊での音情報の読み 取りを行っている。また,音を記録することを目的としていないものや大昔の 遺跡等からの音の読み取りなど音響考古学とでもいうべき分野への挑戦も行っ ている。

7. 言語獲得と場・空間の記述
 音声のモデル化によらず聴覚・発声器官と脳の信号処理モデルに基づいた計 算機による言語獲得,場の生成を考慮した言語・空間情報の記述と抽出に関す る研究を試みている。

8. インターネットを利用した全周画像と音場の伝送システムの構築
  ユネスコの"New technology for culture"プログラムと連携して,「時が たてば消滅してしまう人間活動のあらゆる様相」を後世に残そうという現代版 地球文書館というべき研究を行っている。 限られた伝送容量のネットワークを介して文化遺産,自然遺産の景観と音をい かに自然に伝送するか研究を進めている。映像はHDTV,音は1bit信号での伝送 を行っている。

9. シグナルエンハンスメント −信号分離と時間軸圧伸およびピッチ変換−
  耳で聞分けられる音の違いは時間や手間をかければ機械でも聞分けられる はずだと言う考え方に基づいて,雑音と信号の分離をしたり,複数の音源を変 えずに時間軸を変化させたり,時間軸を変化させることなく音程を変える処理 などを行っている。

その他最近の研究
HOME Copyright(c) 1998-2001 Waseda University Acoustic Lab. WWW Administrator, All rights reserved.